
ベトナムではピックルボールのコートが、2023年のホーチミン市で2面だったものが2025年には1,000面を超えました。なぜ2年でここまで広がったのかを、数字と5つの理由で解説します。
- ベトナム・ホーチミン市のピックルボールコートは2023年中盤の2面から2025年に1,000面超へ増えました(VnExpress International・2025年12月)
- 2025年1〜10月のベトナムのピックルボール関連商品の売上は約1兆ドン(約3,800万ドル)、パドル販売は140万本で前年の約7.9倍でした
- ベトナムが速かった理由は、若い人口・低いコート料金・有名人とSNS・テニスコートの転用・国際大会の誘致の5つです
ベトナムのピックルボールはどれくらい広がっている?
ベトナム最大の都市ホーチミン市では、ピックルボールコートが2023年中盤の2面から2025年には1,000面超に増えました(VnExpress International・2025年12月)。アメリカが60年かけた広がりを、ベトナムは2年ほどで駆け抜けています。
項目 | 数字 | 時点・出典 |
|---|---|---|
ホーチミン市のコート数 | 2面 → 1,000面超 | 2023年中盤 → 2025年・VnExpress International |
ダナン市の定期プレイヤー | 約1万人、標準コートの複合施設30か所超 | 2025年・同 |
関連商品の売上(1〜10月) | 約1兆ドン(約3,800万ドル) | 2025年・同 |
パドルの販売本数 | 約140万本(前年比689%増) | 2025年1〜10月・同 |
取り扱うオンライン店舗 | 1,683店(前年の2倍) | 2025年・同 |
コートのレンタル料金 | 1時間15万〜25万ドン(約900〜1,500円) | 2025年・同 |
出典: VnExpress International「Hooked after one try: How pickleball becomes one of Vietnam's hottest sports」(2025年12月7日)。ドン円換算は2026年9月時点の概算。
プレー人口については、プロ団体UPA AsiaとYouGovが2025年7月に「ベトナムは認知率88%、頻繁にプレーする人1,600万人超」と発表しています。ただしこれはオンライン調査の回答率を人口に掛けた推計で、実数とは開きがある可能性があります。確度の高い「コート数」「売上」「販売本数」を中心に見るのが安全です。
なぜ2年でここまで広がったのか?
ベトナムが速かった理由は、若い人口・低いコート料金・有名人とSNS・テニスコートの転用・国際大会の誘致の5つが同時に働いたことです。アメリカが「コミュニティ → 施設 → リーグ」の順だったのに対し、ベトナムでは有名人とSNSが先に火をつけ、コートが後から追いかける逆の順番になりました。
- 若い人口とラケット文化: ベトナムはテニス・バドミントンが盛んで、ラケットを持ったことがある人が多い国です。VnExpressによると、2025年のプレイヤーの28%は他のラケット競技からの転向組です。
- コート料金の安さ: 1時間15万〜25万ドン(約900〜1,500円)を4人で割ると1人300円前後です。若い人が週に何回も通える価格です。
- 有名人とSNS: 2024年ごろから歌手・俳優・元テニス選手・ミスコン出身者がプレーする様子をSNSに投稿し、「おしゃれで新しいスポーツ」として一気に広がりました。2025年の「ピックルボールラケット」のGoogle検索は230万件に達しています(VnExpress)。
- テニスコートと空き地の転用: テニスコート1面にピックルボールコートは4面入ります。既存のテニスコートや空き地、駐車場にラインを引いて簡易コートにする動きが各都市で起き、供給が需要に追いつきました。
- 国際大会の誘致: 2025年7月にプロツアー「PPA Tour Asia」がアジアで始まり、2026年8月30日〜9月6日にはダナンで「ピックルボール・ワールドカップ」がアジアで初めて開かれました(65か国・地域超が参加見込みと発表)。
コートはどんな場所にある?
ベトナムのコートは、専用施設よりも「テニスコートの転用」「屋外の簡易コート」「カフェやホテルの敷地」が中心です。屋根付きの本格施設は増えていますが、街を歩けば駐車場や空き地にネットを立てたコートが見つかる、というのが2025年の風景です。
形態 | 特徴 |
|---|---|
テニスコート転用 | 1面を4面に分割。既存クラブが手早く始められる |
屋外の簡易コート | 空き地・駐車場にラインとネット。料金が安く、若い層の入口 |
複合施設・カフェ併設 | 飲食とセット。ダナンでは標準コートを持つ複合施設が30か所超 |
ホテル・リゾート | 観光客向け。ダナン・ニャチャンなどのリゾートで導入が進む |
出典: VnExpress International(2025年12月)、Viet Nam News(2024年7月)。
南部のホーチミン市、中部のダナン市が2大拠点で、北部のハノイ市がそれに続きます。2024年には地方都市でもテニスコート4面をピックルボール用に改修する例が報じられており、大都市から地方への波及が始まっています。
2026年ワールドカップがダナンで開かれた意味は?
2026年8月30日から9月6日にダナンで開かれたピックルボール・ワールドカップは、アジアで初めての開催で、ベトナムが「アジアのピックルボールの中心地」として国際的に認められたことを意味します。大会は65か国・地域を超える参加を見込んで発表され、各国の代表チームが集まりました。
プロツアーの側でも、2025年7月に始まったPPA Tour Asiaに続き、チーム制リーグMLP(Major League Pickleball)のアジア版が2026年に予定されています。アメリカのプロ団体が「次の市場」としてアジアに直接投資を始めており、その受け皿として真っ先に選ばれたのがベトナムでした。
日本からの見え方としては、「アジアの国際大会がすぐ近くで開かれる時代になった」ということです。飛行機で5〜6時間の距離に、世界レベルの大会と数千面のコートがある環境が整いました。
日本と何が違うのか?
日本とベトナムの最大の違いは、コートの供給スピードと、有名人・SNSによる「かっこいい」の演出が先に来たかどうかです。日本の競技人口は約33万人、認知率は13.1%(2026年3月時点・株式会社ピックルボールワン調査)で、まだ「知られていない」段階にあります。
項目 | ベトナム | 日本 |
|---|---|---|
コートの増え方 | 屋外の転用・簡易コートで一気に増加 | 屋内の専用施設が中心で、増え方は緩やか |
1時間の料金(4人で割った目安) | 1人300円前後 | 専用コートで1人500〜1,000円前後 |
火をつけたもの | 有名人のSNS投稿・国際大会 | テレビ露出・企業イベント(有名人の継続的な発信はこれから) |
統括団体 | クラブ・大会主催者が先行し、団体は後追い | 2026年に2団体が統合し Pickleball Japan(PJ)に一本化 |
気候 | 年中屋外でプレー可能 | 梅雨・冬があり屋内施設が必要 |
出典: VnExpress International(2025年12月)、株式会社ピックルボールワン「日本のピックルボール市場調査2026」(2026年3月)。日本の料金は首都圏の専用コートの一般的な範囲。
気候と土地の条件が違うため、ベトナム式の「屋外簡易コートの乱立」を日本でそのまま再現することはできません。一方で、「有名人とSNSで『行きたい』を先につくる」「テニスコートを分割して供給を増やす」の2点は、日本でも同じ効果が見込めます。
日本が学べることは?
日本が学べるのは、施設を増やす前に「見せ方」で需要をつくったこと、そして既存のテニスコートを分割して供給を急いだことの2点です。どちらも大きな投資を必要とせず、日本の施設や団体がすぐに取り入れられます。
- 見せ方を先に: ベトナムでは有名人のSNS投稿が「おしゃれなスポーツ」というイメージを先につくりました。日本では動画・SNSでの継続的な発信が、まだ空いている領域です。
- テニスコートの分割: 1面が4面になるため、稼働の低いテニスコートを持つ施設にとっては、少ない投資で新しい客層を呼べる手段になります。
- 料金の入口を低く: 1人300円で週に何度も通えるベトナムの価格は、日本でそのまま真似できませんが、初心者会やオープンプレーの参加費を低く抑えることで「2回目に来る人」を増やせます。
ベトナム旅行でピックルボールはできる?
できます。ホーチミン市・ダナン市・ハノイ市には数百〜1,000面規模のコートがあり、パドルとボールをレンタルできる施設も多いため、手ぶらで訪ねることも可能です。料金は1時間15万〜25万ドン(約900〜1,500円)が目安で、事前予約はSNSやメッセージアプリで受け付ける施設が一般的です。
個別の施設の予約方法や営業時間は変わりやすいので、渡航前に各施設の公式SNSで最新情報を確認してください。
よくある質問
ベトナムでピックルボールはいつから流行っていますか?
2018年ごろに持ち込まれ、2023年から2025年にかけて急拡大しました。ホーチミン市のコート数は2023年中盤の2面から2025年に1,000面超になっています(VnExpress International・2025年12月)。
ベトナムのピックルボール人口は何人ですか?
公式統計はありません。UPA AsiaとYouGovの調査(2025年7月)は「頻繁にプレーする人1,600万人超」と推計していますが、オンライン調査の回答率を人口に掛けた数字のため、実数とは開きがある可能性があります。
ピックルボールのワールドカップはベトナムで開かれたのですか?
はい。2026年8月30日から9月6日にダナン市で開かれ、アジアで初めての開催となりました。65か国・地域を超える参加が見込まれると発表されています。
ベトナムのピックルボールコートの料金はいくらですか?
1時間15万〜25万ドン(約900〜1,500円)が目安です(2025年・VnExpress International)。4人で割ると1人300円前後になります。
まとめ
ベトナムのピックルボールは、ホーチミン市のコートが2年で2面から1,000面超になり、2025年のパドル販売は140万本、2026年にはアジア初のワールドカップがダナンで開かれるまでになりました。速かった理由は、若い人口、安いコート料金、有名人とSNS、テニスコートの転用、国際大会の誘致の5つです。日本は「見せ方を先に」「既存コートの分割」の2点を学べます。
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